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「幻影」に以前載せたものを思い立って加筆修正。
山南捏造ED後で、切ない系です。
今月ついに随想録が発売になるし・・・
なんだろう、山南さん思い出したら泣きたくなってきた;
※稚拙な表現・時代錯誤な表現等ありましたらごめんなさい。生温く見守ってやって下さい(汗)
興味のある方だけ続きをどうぞ…
**********
「敬助さん。」
「おや、千鶴・・・どうしたんですか? 眠れないのですか?」
庭に佇みゆっくりと振り返る敬助さんが、今夜は何故かとても儚げで。
そのまま月光に溶けてしまいそうで・・・
「・・っ」
慌てて駆け寄り自分の腕を背後から回し、身体の温もりを確認する。
”・・・暖かい”
「どうしました?」
クスクスと笑いながら振り返る敬助さんの顔は穏やかに、私を見つめている。
「あ・・・ちょっと眠れなくて。気付いたら敬助さんが居なかったので探しちゃいました。」
「不安に、させてしまいましたか?」
「そんなことはありません!・・・どこに居ても必ず私は見つけます。」
「奇遇ですね。私も・・・貴女なら・・・いつでも、どこにいても、時代が変わっても、どんな姿になっても・・・必ず見つけますよ。」
微笑みながら、暫く寄り添って輝く月を眺めと、ふと敬助さんが口を開いた。
「誠は、どうしました?」
「3人で森へ行けたのが楽しかったんでしょうね、はしゃいでいましたから・・・よく寝ています。」
「・・・大きくなりましたね、誠も。」
「ええ、最近は剣の稽古が凄く楽しいようですよ。」
「そうですか?私としては、千鶴を毎日取り合って大変ですが。誠は母親が大好きですからね。」
形の良い眉を顰めて困り顔で呟く様に、クスクスと笑い声が漏れてしまう。
「敬助さん、私には”父上は?父上のお部屋に行ってもいい?”と毎日のように聞いてくるんです。」
「そういえば最近は、簡単な本を読んでいますね。やはり子供は覚えが早い。」
「えっ!いつの間に!・・・何だか仲間はずれみたいで寂しいです。」
「それは、どちらにヤキモチを焼いてくれているのでしょうね?・・・勿論、私、でしょう?」
ふと顔が近づいた。接吻される予感にそっと目を閉じた。
すると左肩にかかる重み。
「っ!」
「敬助さん!?」
「・・・あぁ、大丈夫ですよ、ちょっと・・・っ 昼間に無理をしすぎたのでしょう。」
そう言って、数年前に作った桜の木の下にある長椅子へ腰掛ける。
「何か羽織るものと・・・っ」
家へと駆け出そうとしていた私の腕を敬助さんの腕が止めた。
「・・・千鶴、ここへ。」
腕をそっと掴まれ、言われるまま隣に腰を下ろす。
瞳には私が映っていて。
瞬きなんてできなかった。
月明かりで微笑む敬助さんの姿を目に焼き付けたかった。
「・・・目を閉じて。」
繊細な指先が頬に触れる。
「そのまま、聞いて下さい。」
ぽつり、ぽつりと 言葉が紡がれる。
私の命は、あの日の仙台で潰えるはずだった。
しかし貴女は私の手を取って導いてくれた。
・・・ここでの日々は、毎日が光り輝く宝石のようでした。
そして、更に貴女は奇跡を・・・新たな命を育んでくれた。
本当に、有難う。
自然と頬を伝う雫に、微かな柔らかい感触が伝う。
「・・・まだ、目を・・開けては・・・いけないんです、か?」
「・・・ええ。」
そっと暖かい手が頬を拭う。
あぁ、暖かい。貴方の手は、こんなにも暖かいのに。。。
「また、会いましょう。 必ず・・・」
唇が深く重なった。
満開の桜の下、気の遠くなるような・・・永い口付けと約束。
どれくらい経ったのか。
ゆっくり目を開く千鶴の頭上には、まるで包み込むように風にそよぐ桜吹雪。
山南の着物を掻き抱きながら、桜の幹へ触れる。
「・・・敬助さん、 ここに、いらっしゃるんですね。」
呟くと桜の花弁が”泣くな”と言わんばかりに頬を撫でていく。
桜の散る音は、囁きのようで。
「・・・ここに、居るんですね。」
ふわっと風で桜が舞い上がる。
その向こう側に、幸せそうに微笑む山南が確かに見えた。
『”・・・愛して、います・・・”』